本草綱目● ほんぞうこうもく

  全52巻。明の李時珍の撰。1552年(嘉靖31),編さんに着手,1578年(万暦6)に完成,1590年(万暦18)に南京で最初に出版され,金陵本と呼ばれた。中国では薬物のことを古くから本草と呼び,多くの本草書が伝えられたが,本書は1,892種の薬物が16部60種にわけて収められた大部分のもので,近代的本草書の嚆矢とされている。無機物を水・火・土・金石の4部,植物性を草・穀・菜・果・木・服器の6部,動物性を虫・鱗・介・禽・獣・人の6部にわけ,各部を細分して60種とし,各薬品については,釈名(異名とその出典と諸家の語釈)・集解(形状・鑑別法・産地など)・正誤(旧説の誤謬の批判)・修治(生薬の調整法)・気味(気味と有毒無毒および諸家の誤)・主治(諸家の薬効説)・発明(薬理についての新説)・附方(簡法の列挙)の8項目の解説を行っている。金陵本以後,中国でも日本でもしばしば出版され,この書の注釈や研究も多く,中国および日本において最も影響の大きかった本草書である。近年中国では,過去における最も偉大な薬物書として尊ばれている。




主な効用
実・・・腎気を補い、胃腸を厚くする。足腰が強くなる。生で咬んで塗ると、筋骨の断砕や腫痛お血(古い血が滞り、腫れる事)に効く。
いがの中心にある扁平な実・・・血を活性化させるのに最も有効。毎日七個食べると、冷痃癖(冷え性からくる肩こり)に効く。筋骨風痛(通風)に効く。
渋皮・・・細かくして蜜と混ぜて顔に塗ると、肌が光りシワがなくなる。
殻・・・煮汁を飲むと、反胃(不消化物を吐く病気)、消渇(糖尿病、婦人性の淋病)に効く。
いが・・・煮汁で火丹毒腫(皮膚にばい菌が侵入して起こる伝染病)を洗うと良い。

     

言い伝え
ある者がおなかの調子が悪くなったが、栗20〜30個を食べさせると すぐに治った。→栗は腎に効く
足腰の弱い人が栗の樹の下へ行って数升食べたら歩けるようになった。→栗は足腰に効く

春陽堂書店「新註校定国訳 本草綱目 第8冊」 より一部抜粋